最近、私が強調しているのがこの言葉。
とくにパン屋さんにおいて、どう売るのかを考える時に、お客様に対して”どれだけ意識をして”食べてもらえるかが勝負であると考えます。 すなわち、美味しいパンを焼いて提供すれば、必ずしもそのパンは売れて当たり前というのではなく、その美味しいパンの、食べ方、成り立ち、歴史、どんな物と一緒に食べるとさらに美味しいのか、作り手のそのパンに対する思い入れ、作り方の工夫などなど、そのパンの意味を意識して食べてもらうことで、より一層美味しさを感じてもらえる。同時に、記憶に鮮明に残してもらいやすくなると思うのです。
ただ単に食べるという行為からは、食べた後、その味は明確に脳裏に刻まれることなく、消えていってしまう。意識しながら食べることによって、期待や思い入れも手伝って、自分にとってより大事なものに感じられます。さらに、具体的な言葉に置き換えて、その味や良さを記憶すれば、その印象は簡単に消えてしまうことはありません。
私の義父:辻バード氏は「旅先通信」という言葉を用い、20年程前から、ヨーロッパを旅する時にはラップトップ・ワープロ(その頃、ノートパソコンはなかった)を持参し、パソコン通信上で現地で食べた感動を、リアルタイムに言葉で表現して、ネット上の友人達に披露していました。一緒に旅をした時は必ず、食べているものの解説をしてくれました。食べ物のみならず、文化、歴史の解説をも付け加えてくれます。そうやって意識して食べる習慣が私にも身に付きました。そのように食べた感動は一生消えないかけがえのないものです。
思いを込めて作ったパンを、相手に意識づけをしながら販売すれば、どんどんファンが増えていくと思うのです。それをするかしないかが、結果を大きく左右すると私は考えます。是非、好きなものの価値を共有すべく、コミュニケーションを図っていきましょう。
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