真右にある棚には、ショップカードや、同店の近所に住む染色家や陶芸家などによる作品が置かれている |
パンは20〜25品目揃う。商品を陳列するケースは、籐製のかごやホーロー素材のバット、陶器製またはガラス製の器を使いわけ、それぞれの商品の表情を豊かに見せている |
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「隠れ家のような店にしたいと思っていたので、駅から少し離れていて人通りがそれほど多くない場所を選びました」 昨年3月にオープンしたベーカリーカフェ「鎌倉二十四節気」のオーナーシェフ、瀧澤智美さんは、丁寧に、ゆったりとした口調で同店の立地についてこう話した。同店は、JR鎌倉駅から1・6キロほど離れた住宅街にある。店内は、瀧澤さんの丁寧な物腰と通じるような落ち着きある雰囲気があり、観光客で溢れかえる駅周辺の喧騒とは別世界だ。 瀧澤さんは「開業準備をするに当たって、まず、居心地の良い空間があって、そこでおいしい料理とパンが提供できたらという思いがりました」と話す。そのため、物件探しと店の内装に力を入れた。 物件は古民家を探した。「年数を経た柱や梁は、懐かしさや温かみがあります。それらの良い部分を残して改装できたらと思ったんです」(瀧澤さん)。鎌倉という場所にこだわったのは、学生時代からよく遊びに来ていて馴染みがあったことと、好きな寺社仏閣が多くあるからだ。 物件探しは、予想以上に時間がかかった。「古民家は最近人気ですが、鎌倉という場所に限ると、さらにその人気の度合いは高まります。本格的な古民家を紹介する『鎌倉古民家バンク』では4000人以上の人たちが順番待ちしている状態でした」(瀧澤さん)。そのような状況ではなかなかオープンまで漕ぎ着けない。そうした状況の中、築40年の古屋付きの土地を見つかったので、その物件に決めた。 理想としていた古民家ではなかったが、柱や梁は残すべき趣の良さがあった。ジャッキで支えながら、10カ月かけて改装した。「新築するより、時間も手間もかかったと思います」(瀧澤さん)。壁材や塗料などは、...(月刊ブランスリー2012年7月号へ続く) |