横山杏奈さんは今年、カリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストのインストア・リテールベーカリー製品部門で金賞を受賞 |
金賞を受賞した「ルナ・ロッサ」(200円)。中にクリームチーズとアーモンドクリームを混ぜたものと、レーズン、アプリコットが入っている |
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パン業界では、毎年様々な製パンコンテストが開かれ、多くの参加者が腕を競っている。パン職人にとっては、自分の腕を試すいい機会であり、いっしょに参加したほかのベーカリーの製パンの仕事を間近で見るいい機会でもある。商売の観点からは、コンテストで賞を獲得すれば、それが販売促進の貴重な材料になる。今回は、コンテストに積極的に参加し、受賞製品を販促にうまく活かしているベーカリーを取材した。
普段使いの材料で迫力と斬新さを出す 埼玉県川口市のベーカリー「ブーランジュリーKヨコヤマ」はカリフォルニア・レーズンベーカリー新製品開発コンテストで、2008年から毎年受賞者を出している。 横山暁之介オーナーシェフの娘で同店で5年間勤務している横山杏奈さんは今年、同コンテストのインストア・リテールベーカリー製品部門で金賞を受賞した。受賞作品はレーズンの月を意味する「ルナ・ロッサ」という名前のヴィエノワズリーで、現在同店で200円で販売している。同店は、これまで様々なコンテストで合計12製品が賞を受けており、そのうち横山オーナーシェフが出したのが4製品、従業員が出品したのが8製品となっている。そのうち6製品を店舗で販売している。 ころころと転がる球体の形が特徴的な「ルナ・ロッサ」は、刻んだピスタチオのトッピングなど、細かな細工も施され、見た目にも豪華な一品と言える。しかし、そんな見た目に反して「常食のパンとして開発しました」と杏奈さん。店頭でも、受賞の文句はポップにさりげなく記載されているだけだ。「受賞後、店頭に初めて並べたときは一番目立つ場所に並べましたが、今はほかのヴィエノワズリーと一緒に並べています。特別に宣伝して売っていこうというよりは、いつもお店に並んでいる製品が受賞したという意識を持っています」 コンテスト用のパンではなく、普段店頭に並べるパンで勝負する。この姿勢は、自身も数々のコンテストの受賞暦がある横山オーナーシェフの考え方に基づいている。「ムッシュ(横山オーナーシェフ)は、コンテストに応募する製品について『パン職人は芸術家ではないのだから、お客様が手に取りやすくておいしいものでなくてはならない』という考え方を持っています。特別に凝ったもので賞を狙うのではないということです」(杏奈さん) 凝ったものでなくとも、金賞受賞となった「ルナ・ロッサ」について、安奈さんはこう話す。 「工程を合理的にして、作りやすいようにしました。凝らないと言ってもコンテストなので印象に残るものでなくてはいけませ...(月刊ブランスリー2011年12月号へ届く) |