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また来たくなるパン屋さん - 消費者アンケート [2014年10月号 消費者アンケート]

 「また来たくなるパン屋さん」のテーマで、ネットアンケートを実施した。回答者に抽選で「パンセット」をプレゼントするという形で、ブランスリー報道社が運営するパンと菓子のショッピングモール、パン菓子・COM(http://www.pankashi.com/)の懸賞企画として実施。実施期間は、2014年9月1日から8日までで、350人から有効回答を得た。回答者の平均年齢は41・47歳。男女構成は、女性244人、男性106人。

商品がおいしくて価格が手頃なパン屋さん

 「あなたは、初めて行ったパン屋さんにまた行くための判断ポイントは何ですか? 3つ選んでください」と聞き、「店のポリシーを感じる」「おしゃれな雰囲気」「商品の種類が多い」「商品がおいしい」「健康志向のパンが多い」「商品にボリュームがある」「価格が手頃」「好みのパンが多い」「清潔感がある」「入りやすい」「店員が親しみやすい」「パン職人が身近に感じられる」の12の選択肢から3つを選んでもらったところ、「商品がおいしい」が261人(74・57%)と最も多かった。次に多かったのが「価格が手頃」の207人(59・14%)。さらに「商品の種類が多い」と「好みのパンが多い」がそれぞれ132人(37・71%)だった。
 「パン屋さんで、『また来よう』と思った出来事はありますか? 具体的にわかりやすく書いてください」との質問に対しては、全国から様々な回答があった。
 埼玉県の31歳男性(その他)は、「近所のよく行くパン屋のおじさんが笑顔で『また来てね』と言ってくださったときに『また来よう』と思いました」と回答した。
 「パン屋さんで、『もう来たくない』と思った出来事はありますか? 具体的にわかりやすく書いてください」との質問に対しても、数多くの興味深い回答があった。
 北海道の41歳女性(会社員)は「値段が高いから材料も良いものを使っているのだろう、さぞかし美味しいのだろうと思って期待して買ったら、高いだけでたいしたことがなかった」と答えた。

客がベーカリーを判断する基準を立体的に分析すると...

 地域密着型のベーカリーにとって、固定客をいかにして増やし、維持していくかが大きなテーマになる。つまり、来店客に常に「また来よう」と思ってもらわないと、商売が存続できないということになる。
 今回のアンケートで、初めて行ったパン屋さんにまた行きたい思う判断のポイントとして選択された項目の上位には、「商品がおいしい」「価格が手頃」「商品の種類が多い」「好みのパンが多い」「清潔感がある」「入りやすい」などが入っている。
 これらの中で、「商品がおいしい」と「価格が手頃」の2つについて考えてみたい。
 「商品がおいしい」については、もし、商品がおいしくなかったらどうかを考えてみると、ベーカリーとしては成り立たないと考えられる。
 一方、「価格が手頃」については、価格が手頃でないベーカリーが成り立つかどうかを考えてみると、成り立たないとは言い切れない面がある。事実、高品質の商品をブランド化して、手頃な価格とはいえない値段で販売し、成功している例もある。
 こう考えると、「商品がおいしい」「好みのパンが多い」「清潔感がある」「入りやすい」などの項目は、必須の事柄で、これらを実現できなければ、ベーカリーとしてのスタートラインに立てないことを意味する。
 これに対し、「価格が手頃」などのように、消費者のさまざまな属性を考慮した際に意見がわかれそうな項目については、自分の店の位置取りをはっきりと決めなくてはならない。これはつまり、自分の店が、どのような価値観を持った消費者を相手にしていくかを決める作業だ。
 「商品がおいしい」などのほとんどの消費者の価値観が一致する項目と、「価格が手頃」などの、消費者の間で価値観が一致しない可能性がある項目の他に、事前には消費者の意識に存在しない判断項目もある。
 「カリスマパン職人」などと呼ばれる人達が運営する繁盛店は、こうした評価項目で評価されていることが多い。
 例えば、店は外光を思い切りとり入れて、可能な限り開放的で明るくした方がいいというセオリーに対して、外光を遮断した薄暗い店の中で、パンだけをスポットライトで照らした演出をしたベーカリーが大繁盛したりする。
 「パンがおいしい」という評価軸を満たすことが、客と会うときの身だしなみのようなもので、「価格が手頃」という評価軸に対して、どう位置取りをするかが、店の特徴だとしたら、「外光を遮断した演出」は、その店の内面的キャラクターのようなものだ。それは、「パンがおいしい」とか「価格が手頃」とかいう評価軸のように一般化できるものではなく、その店の存在があって、初めて感じ取れる評価軸なのだ。
 できるなら、店の存在自体が圧倒的な魅力を持つようになりたいところだ。
 2回、3回とリピートしてもらえたら、今度は、長期的に安定してリピートしてもらうことが課題となるが、 その際にものをいうのが、店の内面的キャラクターが客に魅力として伝わっているかどうかだと言える。
 多くの場合は、店と消費者がやり取りをしていく過程で、互いに引き合ったり、反発し合ったりしながら、各ベーカリーの固定客が自然に色分けされ、店のキャラクターもいつしか決まっていくものだが、その過程に起こっていることを、自分なりのロジックで解釈することができれば...(月刊ブランスリー2014年7月号へ続く)

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