店長の宍戸謙一さんは午後2時、この日8回目の「クリームパン」(130円)の焼成を行った |
「本日のおすすめ」の「クリームパン」は、入店後最初に目に入る場所に置き、A4サイズのPOPを2枚添えていた |
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「焼きたて」と「手作り」を「クリーパン」で表現 ●パン工房アイグラン豊田店
店の特徴を表現できる商品に育てる 東京・日野市のベーカリー「パン工房アイグラン豊田店」の入り口前には、「本日のおすすめ とろっと手作りクリームパン 1品お買い上げごとに『10円金券』プレゼント」と書かれた看板が立っていた。 「『クリームパン』は当店不動の人気ナンバーワン商品でもあるのですが、『本日のおすすめ』とした今日のような日には、いつも以上によく売れます」(店長の宍戸謙一さん) その「本日のおすすめ」である「クリームパン」は、店に入るとまっ先に、目に飛び込んできた。艶々としてパンパンに膨れた焼きたての状態で、店内中央に位置する平台に並んでいる。 宍戸店長によると、午後2時から4時まではアイドルタイムだというが、そのアイドルタイム内の午後2時を回った頃でも、店内は焼きたてのパンの匂いが充満していた。 「『クリームパン』は、一度に焼成する個数は普段は12個ずつなのですが、今日は売り出しの日なので20個ずつに増やしています。午後2時の時点で、本日8回目の焼成です」(宍戸店長) 窯を担当している宍戸店長は、まめに売り場に出て、商品ごとの売れ行きをチェックしている。一度に多くの量を焼かず、売れ行きを見ながら少数ずつ多数回に分けて焼成していくことで、店頭に並ぶパンを常に焼きたての状態にキープするためだ。 クリームパンが、「艶々としてパンパンに膨れた焼きたての状態」で並んでいたのも、こうした努力があるからだ。 焼きたての「クリームパン」は、パンの部分も中身のクリームも非常にやわらかい。そのため、トングでつかむ際は、優しく扱わなければ潰れてしまう。 ある常連客は、トングでつかんで潰れかけてしまったクリームパンを見ても、まったく驚いた様子はなかった。そのやわらかさが、同店のクリームパンの特徴だと認知しているからだろう。 同店の人気ナンバーワンを保持している「クリームパン」は、6年前の開業時から、レシピはほぼ変わっていないという。 「開業時、焼きたてであることと、手作りであることを当店の特徴として打ち出していこうと決めました。パン生地も中身のクリームもすべて手作りの『クリームパン』なら、こうした当店の特徴を最も表現できます。そこで、『クリームパン』を当店の看板商品として売っていこうということになったんです。また、材料や配合だけでなく、常に焼きたてを並べるということにもこだわってきました。焼きたてで中身のクリームが温かい状態というのも、当店の『クリームパン』の特徴です。そのこともこれまでの6年間で、お客様には大分浸透して きたと思います。また、すべて手作りであるという点で、スタッフにとっても愛着の湧く商品となりますし、当店のオリジナル商品として自信を持って販売していくことができますしね」(宍戸店長) 6年前の開業時、同店の斜め向かいにはライバル店となるベーカリーがあったが、3年前に閉店してしまったという。その店は店内に厨房はなく、販売専門だった。「アイグラン」は、焼きたてのおいしさを打ち出すことで、その店と差別化を図ることができたのだろう。焼きたての「クリームパン」を看板商品として打ち出していくことで、同店の特徴を客に浸透させるこ...(2013年5月号へ続く) |