日本のパン業界は頑張ってきたと思う。元々日本にはなかった食べ物を、こんなに短期間で、日本人にはなくてはならない食べ物にしてしまったのだから。日本のパンにはいろいろな顔がある。手軽に摂れる朝食としての顔、甘党のためのスイーツとしての顔、歩きながらでも食べられる携帯食としての顔、気合いを入れたディナーに出される主食としての顔、などなど、時と場合によって変幻自在に顔を変える。どの顔がよくて、どの顔が悪いなんてことはない。みんなそれぞれに良さを持っている。この間、あるフランス人がこんなことを言っていた。「私の国では、昔と比べたら、主食としてのパンの消費量は劇的に減った」。確かに、裕福になれば、いろいろなおいしい料理を食べるようになるから、主食の量が減るのは当然だ。しかし、現在の価値観はさらにもう一歩進んでいる。「うまいもん」ばかり食べていては、からだによくないということだ。「もっと穀物を摂ろう」という方向に世の中は動いている。主食としてのパンには追い風だ。
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