ブランスリー4月号の「インタビュー」の取材で、京都のたま木亭を取材させていただきました。「日本全国からパンを買うためにわざわざやってくる人が多い」と言われる超人気店なので、気合を入れて、のりこみました。
オーナーは、実直でとても好感の持てる方でした。「あなたにとってパン作りとは何ですか?」と、取材の最後に聞くと、「普通の生活です」という答えが返ってきました。元画学生の私の心に閃光が走りました。
今はもう多分、巨匠扱いされている、美大生時代の私の師匠のひとりであった絵描きさんを間近で見ていて、いつも感じていたことを思い出したのです。「この人は、来る日も来る日もただひたすら絵を描き続けて、はたから見るとかなり大変そうにみえるけど、実は本人はそんなことは意識していないのではないか。『好きだからできる』なんて、なまやさしいものではないのだろうけど、当人にしたら『描かない』なんていうことは、最初から選択肢にはないのではないか」。「描くのは大変だけれど、描かないと、その何倍も苦しくなるから描く」と言った方が正しいのかも知れません。
芥川賞受賞の田中慎弥さんが、「好きな言葉は?」と聞かれて答えた、あるダンサーの言葉も重なってきました。「足が絡まっても踊り続けろ」。
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