実はすごいのにそう見えない人。すごい仕事をしているのに控え目な人。そんな人が好きだ。ある会合である人にあった。おとなしそうな普通の中年の男性だった。ベーカリーのオーナーだった。
あるときふとしたことからその人の店に行くことになった。びっくりした。客で溢れ返り、活気に満ちていた。10人ぐらいのスタッフが広い工場でパンを作っていた。みんな生き生きとしていた。みんなその人を尊敬しているように見えた。売り場の販売スタッフもみんな優しい目をしていた。その人は、たまに売り場に焼き上がったパンを運んでいた。すごく楽しそうだった。全員が一丸になっているように感じられた。 数日後、電話でその人と話したら、やっぱり控えめだった。
私は、最初に会合でその人に会ったとき、その人からは、その人の店の様子が想像できなかった。自分の感度の鈍さを恥ずかしく思った。改めて自分に言い聞かせた。「世の中には、自分には感じ取れないものが驚くほどたくさんあることを潔く認め、でも少しでも多くのことを感じ取れるように、素直に謙虚に、いろいろな人、いろいろなものに接していこう」
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